映画『超高速!参勤交代』感想

超高速!参勤交代

とりま文句なし。
突っ込み所は満載な時代劇。

この映画は凄い。
脚本の時点で第37回城戸賞を全審査員満点で受賞といった実績があり、この映画は骨子とも言える部分から既にプロ審査員の太鼓判を押されている。
つまり例えどんな映画に仕上がったとしても、確実にその道の一定の評価は受けるのである。
むしろ(その事実を知らず)脚本を低評価しようものなら、素人ならまだしも仮に名の知れた批評家だった場合、「脚本のなんたるかを何も解っていないうんこ」のレッテルを貼られてしまう訳だ。これは酷い。いや凄い。

売れるか否か、面白いか否か、好き嫌いは別にして、批評家は脚本について何らかのアプローチで光る部分を見出さなくてはならないのだから大変である。

しかし。
ただ、この映画に関しては、その肝心の脚本が素人目にして良く出来たものであると判断するしか無い。流石は満点受賞作。
勿論受賞を知っているから素晴らしく感じるのではない。言うまでも無いがプロでも何でもない感想屋が受賞云々を気にして感想の結果を変える事は断じて無いからだ。何の意味も無い。

突っ込み所は満載と上記したが、それは言わば時代劇だからと言っていい。
フィクションや突っ込み所が無くては、それはフィクションではない。時代劇である以上、様式美やお約束であり、楽しむ要素の一つでもある。

殺陣にやや不満が、と言うよりチープな演出が目立つものの(もしかしたらそこもまた時代劇の醍醐味なのかも知れないが)、主役佐々木蔵之介の抜刀は付け焼刃にしては及第点の型の良さが光っていた。
家来の五人衆の活躍もコメディと殺陣の二段構えで丁寧に用意されており、ここだけでも脚本の行き届き具合が確認出来る。

近年の時代劇では、確実に頭一つ抜きん出た、秀逸なお薦め映画である。




・『超高速!参勤交代』2014年6月21日(土) 超高速!ロードショー
http://www.cho-sankin.jp/
・超高速!参勤交代 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%85%E9%AB%98%E9%80%9F!%E5%8F%82%E5%8B%A4%E4%BA%A4%E4%BB%A3

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かぐや姫の物語 感想

かぐや姫の物語

泣いて吹き出すホラー50億円。

=以下、ネタバレ全開です。=
つか、ネタバレもクソもないけど。

ラストで翁がかぐや姫を想い語るシーンで、泣く。ここは耐えられん。
その後、かぐや姫を守らんとするシリアスな軍勢の前にアホみたいな音楽を奏でながら登場するパンチパーマに吹き出す。ここは耐えられん。

そしてあたかも平和的にあたかも正しく喜ばしいかのように当然の如く、かぐや姫を拉致する仏パワー。
その自然的で一切の容赦ない(かぐや姫とその周囲の)切り離しに、一種のホラー性を垣間見る。

更にはそれまでの育んだ記憶全てを失わせる羽衣の一撃感。
「穢れ」と言う天女の言葉を激しく否定し、現世の生きるといった事への素晴らしさ尊さを声を挙げて訴えるかぐや姫もまた、羽衣をかけられた次の瞬間には虚無の住人へと恐ろしくあっさりと変貌する。この恐怖。

今更竹取物語を改めて確認するなんて誰もしないだろうから(少なくとも私はしなかった)、忘れていた、もしくは詳しく知らなかったそのディテールに結構新鮮味を感じてしまう。

かと言って媼や捨丸などの脚色が邪魔に感じる事も無く、このアニメの解り易さに貢献しかつ、かぐや姫への味方成分具合に納得する。

確かにかぐや姫は面倒臭く我侭な女である。嫌いな人も多いだろう。これでブスだったらどうなるんだ。
しかし超絶美人で純粋だ。生きるという事を噛み締めるべく望むのだから、捨丸というキャラクターは、それを再確認出来る安価な要素なのである。

一見『かぐや姫』というストーリーには無関係で無視できる無駄なシーンに見えかねない、彼女の生活風景。成長の過程。
この137分という長丁場の半分以上を構成してると思われるこれら日常のカットは、それこそが彼女かぐや姫の望んだ生であり、幸せそのものである。
無駄(と思える程の日々の当たり前)だからこそ意味のある、非常に重要な、退屈極まりないとむしろ感じるべきかも知れない平和である。
それは何も幼少時代に限った事ではなく、辛いと感じた都の暮らしも含まれ、かぐや姫はラストでその限りある現世での起伏を、無である天に向け吼える。

生への憧れを罪とし、穢れと断ずる生と幸せの可能性を与えておいて、その全てを奪い取るこの非常なホラー感。
てめぇの完璧さこそ至高であり現世なんぞ気にするそぶりすら全く無いパンチパーマのクソ野郎ぶり。

原作のパワーをここまで爆発させる高畑監督、渾身の出来。

完全な名作である。なんだこれ。


唯一不安な点は、絵。
信じられない事にこれを手抜きや未完成と感じるクソボケがチラホラいるらしく、これほど異質なアニメーションをハイクオリティに感じないセンスがあるのだから、50億円という制作費も事前に知っておく必要はあるのかも知れない。
好き嫌いはあって当然。
しかしどこをどう見たら未完成に感じるのか、逆に教えて欲しいくらいなのだが。




・かぐや姫の物語 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8B%E3%81%90%E3%82%84%E5%A7%AB%E3%81%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E
・かぐや姫の物語 公式サイト
http://kaguyahime-monogatari.jp/

・高畑勲監督作品『かぐや姫の物語』ネタバレ感想 - 1年で365本ひたすら映画を観まくる日記
http://d.hatena.ne.jp/type-r/20131204
・映画「かぐや姫の物語」で解く『竹取物語』の謎。その2「姫はなぜ結婚を拒むのか」 - エキレビ!(1/3)
http://www.excite.co.jp/News/reviewmov/20131129/E1385455102888.html
・竹取物語 - Wikisource
http://ja.wikisource.org/wiki/%E7%AB%B9%E5%8F%96%E7%89%A9%E8%AA%9E

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スリーデイズ・ボディ 彼女がゾンビになるまでの3日間 感想

スリーデイズ・ボディ 彼女がゾンビになるまでの3日間

非常に綺麗丁寧に纏められたスピンオフ。

本作品は、『28日後...』の副産物であり、オマケとして撮影された約5分の動画(諸事情で未公開)を元に作られている。
感染した直後に発症しすぐさまゾンビと化す個体もいれば、じわじわと時間を掛け自我を失くして行く個体もいる。
この設定は続編の『28週後...』に生かされており、主役のプロットに使用されている。

この映画が肝心の部分を劇中で全て明かさないのは、理由として上記の経緯が隠されており、つまるに一本の映画として見れば未完成とも取れてしまうのは致し方ない事なのである。

あくまでオマケ。
あくまで”とあるゾンビ映画”のスピンオフである。

そういった事情込みで判断した場合、未完成こそが、説明不足こそが、この映画の醍醐味である事もまた理解出来る。
メイキングや特典映像に映画の完成度を求める人はいないだろう。
約80分とは言え、これもまた、あくまで同じなのである。

某ゾンビ映画の隣に添えればそれで完成する、そんな映画である。


注:ネタバレ(クリックで開きます)



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Author:ねーやん
さーせん。

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