かぐや姫の物語 感想

かぐや姫の物語

泣いて吹き出すホラー50億円。

=以下、ネタバレ全開です。=
つか、ネタバレもクソもないけど。

ラストで翁がかぐや姫を想い語るシーンで、泣く。ここは耐えられん。
その後、かぐや姫を守らんとするシリアスな軍勢の前にアホみたいな音楽を奏でながら登場するパンチパーマに吹き出す。ここは耐えられん。

そしてあたかも平和的にあたかも正しく喜ばしいかのように当然の如く、かぐや姫を拉致する仏パワー。
その自然的で一切の容赦ない(かぐや姫とその周囲の)切り離しに、一種のホラー性を垣間見る。

更にはそれまでの育んだ記憶全てを失わせる羽衣の一撃感。
「穢れ」と言う天女の言葉を激しく否定し、現世の生きるといった事への素晴らしさ尊さを声を挙げて訴えるかぐや姫もまた、羽衣をかけられた次の瞬間には虚無の住人へと恐ろしくあっさりと変貌する。この恐怖。

今更竹取物語を改めて確認するなんて誰もしないだろうから(少なくとも私はしなかった)、忘れていた、もしくは詳しく知らなかったそのディテールに結構新鮮味を感じてしまう。

かと言って媼や捨丸などの脚色が邪魔に感じる事も無く、このアニメの解り易さに貢献しかつ、かぐや姫への味方成分具合に納得する。

確かにかぐや姫は面倒臭く我侭な女である。嫌いな人も多いだろう。これでブスだったらどうなるんだ。
しかし超絶美人で純粋だ。生きるという事を噛み締めるべく望むのだから、捨丸というキャラクターは、それを再確認出来る安価な要素なのである。

一見『かぐや姫』というストーリーには無関係で無視できる無駄なシーンに見えかねない、彼女の生活風景。成長の過程。
この137分という長丁場の半分以上を構成してると思われるこれら日常のカットは、それこそが彼女かぐや姫の望んだ生であり、幸せそのものである。
無駄(と思える程の日々の当たり前)だからこそ意味のある、非常に重要な、退屈極まりないとむしろ感じるべきかも知れない平和である。
それは何も幼少時代に限った事ではなく、辛いと感じた都の暮らしも含まれ、かぐや姫はラストでその限りある現世での起伏を、無である天に向け吼える。

生への憧れを罪とし、穢れと断ずる生と幸せの可能性を与えておいて、その全てを奪い取るこの非常なホラー感。
てめぇの完璧さこそ至高であり現世なんぞ気にするそぶりすら全く無いパンチパーマのクソ野郎ぶり。

原作のパワーをここまで爆発させる高畑監督、渾身の出来。

完全な名作である。なんだこれ。


唯一不安な点は、絵。
信じられない事にこれを手抜きや未完成と感じるクソボケがチラホラいるらしく、これほど異質なアニメーションをハイクオリティに感じないセンスがあるのだから、50億円という制作費も事前に知っておく必要はあるのかも知れない。
好き嫌いはあって当然。
しかしどこをどう見たら未完成に感じるのか、逆に教えて欲しいくらいなのだが。




・かぐや姫の物語 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8B%E3%81%90%E3%82%84%E5%A7%AB%E3%81%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E
・かぐや姫の物語 公式サイト
http://kaguyahime-monogatari.jp/

・高畑勲監督作品『かぐや姫の物語』ネタバレ感想 - 1年で365本ひたすら映画を観まくる日記
http://d.hatena.ne.jp/type-r/20131204
・映画「かぐや姫の物語」で解く『竹取物語』の謎。その2「姫はなぜ結婚を拒むのか」 - エキレビ!(1/3)
http://www.excite.co.jp/News/reviewmov/20131129/E1385455102888.html
・竹取物語 - Wikisource
http://ja.wikisource.org/wiki/%E7%AB%B9%E5%8F%96%E7%89%A9%E8%AA%9E
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