『ねむれ思い子 空のしとねに』感想

ねむれ思い子 空のしとねに

荒削りだが根性を詰め込んだ快作。

第2の新海誠と称するのは、キャッチ的に、ややライト過ぎるきらいはあるものの、正しくそれ。
約7年間の緻密な作業を1人で積み上げ、そして完成まで漕ぎ着ける。
そのプロセスだけでも並大抵の根性では辿り着けず、それを成し遂げたからこそ、栗栖直也監督の語る”縁”がこの作品を後押しする結果に繋がったのだと思える。

本作品は、あくまで栗栖監督のソロプロジェクト企画だが、自主制作作品の劇場公開と言う快挙は、監督の今後の展開や、更には他の製作者たちへの強い推進力になるのではないだろうか。いや、なるね。

ちなみにDVDで観賞。
感想ぐぐってみたけど全く無かった。劇場公開後なら少しは出てくるんかな。


=以下、完全ネタバレです。=


キャスティングは、これちょっと卑怯なんじゃね?ってぐらい豪華。
どういう経緯で集まったんだろう。自主制作でこれは凄い。
それぞれ素晴らしく安定した演技なんだけれど、田中少佐演じるゲス子が、良い。
少佐は悪役もまあ少なくないんだが、ここまでのゲス子は見たこと無いので、新鮮でニヤニヤして見てた。つってもそこまでゲスじゃないんだけども。
そう言う意味では、井上氏の悪役ゲス子も見てみたい。あるんだろうか。

各キャラクターやストーリーのラインも把握し易く、綺麗に整頓された配置で、約50分と言う枠に見合った構成の巧みさが見受けられる。
一本のテーマに余計な伏線や話を盛り込まず、シンプルに仕上げた手腕は評価したい。

舞台が宇宙である事や、死に戻り、もしくは命そのものを母の愛として描く事で、その深さと大きさが、普遍的故に忘れられがちなカーチャン最強説を、より強く思い出させるギミックになっている点は、個人的に好み。
井上氏の威力まじぱねぇんだわ。

だからこそ逆に、父親が死んでるのが、凄く痛い。
母親無双なのは全然無問題なのだが、元々シングルマザーの話では無いし、母親と同様の条件で死亡するキャラクターなだけに、その後の影形、回想や話題にすら父親が挙がらないのは、オミットとは言え悲し過ぎる無視具合で、カーチャン信者の私をもってしても不憫に感じる扱いである。

一応、父親の我が子に対する愛情の役割としては、サンジ先生が担っている部分があるにはあるのだが、それはまた別であり。
もっと言えばそういった役割が先生にあるが為に、余計に主人公織音の父親のレゾンデートルが希薄になる部分でもある。

いやそもそも存在自体が危うい配置である。
唯一彼が登場する冒頭ですら姿は1カットも映らず、声のみの出演で、事故死してからは話的に存在自体を事実上抹消されている。(エンディングで後姿の1カットあり)
後述する母親の初登場シーンが描写的にイメージっぽいだけに、この冒頭すら実は虚構や作られた記憶的なシーンなんじゃねぇかと思えてしまう。

復活したカーチャンが何よりも先ず無我夢中でやった事が、生まれたばかりの娘の安否の確認・捜索と言う語りは確かに泣けるし、久々に娘に会ってテンション上がりまくりの可愛らしさも溜まらんのだが、夫への言及皆無なのは、少々辛いし不自然。
 ※ごめん、言及あった。
洒落で入った生命保険がカーチャンだけってのも腑に落ちないし、いや諸々込みで彼女の性格ではあるんだろうが、夫に先立たれた母親キャラであった方が、娘に深い愛情を込める母親の描写としてより正確性を増した気がしないでもない。
初期と後期で脚本が変わったりしたんだろうか。7年作品だもんな。

テーマがストーリーの根幹として解り易く纏められた脚本ではあるが、同時に荒らもしくは説明不足が目立つのも解り易いマイナスポイントではある。
基本的に推理や想像で補完は可能なレベルではあるものの、3DCGのディテールへの拘りが垣間見られる作品なだけに、少しばかり残念な部分に感じられる。

例えばオープニングに当たる冒頭部分から、タイトル後の本編へ繋がるシークエンス。
ここは割りと唐突に大幅な時間経過が行われるのだが、「○年後」みたいなテロップが出る訳でもなく、織音の境遇や進行するストーリー、そして背景などの舞台装置で年数の経過具合が判明して行く部分である。
織音が恐らく冒頭の赤ん坊が成長した姿である事が解り、視聴者は物語世界の19年の月日を把握する訳だが、そこまでは別にいい(19年と言う具体的な数字は劇中には出て来ない)。
問題はタイトル前後で、科学力に差があり過ぎる事である。たかが19年でサイエンス発達し過ぎ問題。

冒頭の時点で、それなりにSF感漂う近未来なパーセンテージが高めな世界観だったらそれほど問題じゃないのだが、しかし描かれたのはあまりにもリアルな現代である。
もしかしたら印象的に浮かび上がるように登場する母親のシーンが、近未来を示唆したものなのかも知れないが、それにしては加減が微妙過ぎるし、解り辛い。多分違うし。
 ※病院のベッドで子守唄を歌う母のビデオを見たと織音がセリフするシーンがあり、冒頭の部分もそれらの一種である可能性がある。
リアルな2000年代とさほど変わらないレベルの科学水準から、19年であそこまでのレベルに達するのは、無理とまでは言わないが、先ず無理。

他にも不備や不可思議に感じる箇所、謎のままっぽい箇所がいくつかある。

織音が強盗殺人で指名手配されているにも関わらず変装無しで出歩く点。
 ※一応人気の無い夜で、かつ整形してる可能性も無くは無い。父親に似てると言われるし整形の可能性は超低いけど。

コンビニでレジから受け取った?メモの意味が結局解らない点。
 ※カーチャンからのメッセかなぁ。にしても織音が意味解って無かったっぽいし、待ち切れずのフライング?

母親が待ってると言われるシーンでの織音の無反応ぶりや、相対したシーンでの落ち着き具合(驚いてはいるんだが)。
 ※事前に母親の存在を説明されてる感じがしないだけに(説明してたと考えれば辻褄は合う)、織音のリアクションの薄さに違和感あるんだよね。カーチャンとコンタクト取ってた訳じゃねーしな。
  母親がいると解っていたのなら、年取ってないとこだけに驚いたって感じのリアクションではある。でも事前に解ってたって描写無いんだよなー。
  ギリ近い説明(いや近くないけど)としては、死んだカーチャンには空で会えるみたいな子供頃の回想シーンがあるけど、説明的な伏線としては余りにも弱い。

何故カーチャンだけが蘇生に成功したのか。
 ※別に偶然でも、残された謎でもいいけどね。

カーチャンが敵の腕を捥ぐ点。
 ※急にグロいっつーかエグい。ホラー映画見てキャーキャー言ってたあのカーチャンがこんなに豹変!的な事なのか。
  カーチャンはカーチャンなんだけどモンスターでもあるよって事かな。でもカーチャンだよみたいな。

んで、変な治療する点。
 ※マジで意味が解らない。カーチャン細胞と交換しても別に普段と何も変わらないんだよ同じ人間だよって事と、彼らの「怪物と同じになっちゃった」恐怖感を表してんのかな。解んね。


あとこれも気になったっつーか、特に3DCG系の悲しき性っつーか、現状のアンビバレンツな問題点。


クソ解るwww
アマゾンレヴューでもCGレベルについて言われてて、確かにその如何ともし難い部分は、どうしても付きまとう。
私も正直、観賞を迷ったクチで、客から見える入り口の現実的と言うか許容的な狭さは、特にトゥーンシェードな技法(本作品は中間っぽい)の3DCG作品にありがちな「安っぽく見られ易い」と言った問題点を多分に含んでいると思う。
中身の良い作品であればあるほど、その客観点はマイナスとしてのウエイトが重く、ぶっちゃけ商業的な解決策は多分皆無。
広告やレヴューでの援護は微々たる威力だろうし、結局は才覚をキャッチ出来るアンテナを持った金持ちコネ持ちに発見して貰うしか無いのかなぁ。

つっても、元よりお金稼ぐって目的で自主制作してるクリエイタなんていないんだろうけども。作るんに金要るしな。




・『ねむれ思い子 空のしとねに』公式サイト
http://www.hand-to-mouse.jp/shitone/

・「ねむれ思い子 空のしとねに」 | うしがまろびて
http://go-livewire.com/blog/ushi/misc/20140701-2053/
・「ねむれ思い子」に関する感想・評価 / coco 映画レビュー
http://coco.to/movie/41572
・Amazon.co.jp:カスタマーレビュー: ねむれ思い子 空のしとねに [DVD]
https://www.amazon.co.jp/product-reviews/B00KPQPIPG/ref=cm_cr_dp_see_all_btm?ie=UTF8&showViewpoints=1&sortBy=recent
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