『殿、利息でござる!』感想 クソタイトル詐欺

殿、利息でござる!
卑怯過ぎる。
そしてギリギリの映画。


一応ヒットらしいし、評価も高い。
だから良いものの、このふざけたタイトルとポスター、予告では、内容や趣旨を正しく伝えた広報とはとても思えない。
無論それは映画を観てから判明する詐欺なのだが、それでは遅いから激しく憤る訳である。

まこと腹立たしい。


=以下、ネタバレです。=

確かにコメディではある。
「実は、実話じゃった」って予告のセリフもかなり好きな部類だが、しかしこの映画の中身は完全なるリアル感動エピソードなのだ。
それも上からの極めて厳しい締め付けに喘ぐ百姓たちが、知恵と汗を搾りに搾って、中には命すら削って訴える懇親の申し出であり。
如何にして無い中から銭をかき集めるか、そして如何にしてお上の心を揺さぶるか、である。

それらは「ゼニと頭は、使いよう。」等と言った阿呆丸出しのキャッチコピーからは決して窺い知れない、アクション性の知略とは掛け離れた、ただ汗、汗、汗(もっと良い言葉がある筈)であり、微力の欠片をひたすら積み重ねただけのものである。
そして極めつけは”訴えるだけ”と言う点に集約される。
武力や暴力には一切頼らず、頂上までの過程に一人でも悪代官がいればそこで往生する、言ってみれば人柄や運にすら任せた、恐るべき平伏レベルの申し立てである。

更には、そんな事に己の人生を費やし、子々孫々を巻き込み、代々続いた店を潰す覚悟までするのだから、それがリターン無しの事業だとは信じられない。
作戦が成功さえすれば、いずれはその利益が自分を含んだ町全体に還元されていくシステムだとしても、殆ど慈善であり、寄付や募金の類に相当する。恐ろしい。

いやこの枯渇した私のような老人すらも、映画を視聴し湧き水の如く鼻水を垂れ流すのだから、ドレッドノート級の感動剤には違いない。

違いは無いのだが、とっくに潰れたていたと話す浅野屋がその上もう500貫(約3千万円)を出す際に、その家族が「受け取ってくれた」と安堵する場面は、泣き崩れた私の心をへし折るに十分な気持ち悪さを印象として抱かせるものだったことを正直に告白する。

あのシーンは止めに近い。いや止めだろう。
もうぶっちゃけ「ここまで行くと逆に気持ち悪い」ってレベルだと思う。
殆ど奉仕厨とか、なんかの盲目的信者だよ。怖いよ。

ギリッギリである。
きっちり泣けてきっちり笑えるエッセンスのバランス配合が見事なこの映画は、ギリギリであった。普通の映画なら吐いてる。

またこの映画では、悪人を描いていないと言う点も特徴的と言える。
一応、松田龍平扮する萱場杢が劇中の悪人を一手に担う役割ではあるものの、道理を弁えない根っからの極悪人では無く、どちらかと言うと話を通せば通る方であり、大抵の場合最大の難関である殿様もまた、馬鹿でも悪人でも無いと言ったあっさり風味である。
じゃあそもそも何でそんな苦しんでたの?と疑問すら浮かぶ良い上司たちに恵まれた環境で、ボタンの掛け違いが極限まで行くとこうなると言う見本なのかと邪推するも「藩の身勝手な都合」で彼らの活躍から40年後に利息を白紙にされたとナレーションされる事から、やはり描かれなかった部分で理不尽の権化がどうしようもなく絡んでいると解る。

その悪人や劣悪な環境があって、本来、それの対極に位置する浅野屋のような恐るべき善人がバランス良く見え、基本的には物語としてスムーズにと言うより歪な偏りを感じさせない。
この点からもこの映画がかなりギリギリで、そして故に良作である事が解る。もしくはギリアウトなのだが実話なので強引に”良”と判断せざるを得ない。

凄まじく超ストレートな泣かせ話として、涙腺をこじ開ける豪腕っぷりが卑怯とすら思うのだが、それが正しく機能するからこそ、所詮は百姓、つまり庶民にしか届かないだろうとも思う。
仮にこの映画の話で感動し、少しでも影響を受ける人は、結局良い部分の揺らぎを持つ最低でも小悪人なのであり、一般庶民である。
この映画に出て来ないレベルの悪人は、例え泣いたとして、その涙を諭吉で拭うに違い無いし、それ以前に一笑に付すだろう。それが解る映画でもあった。




あ、そうだ書き忘れたけど、広報ほんと死んで欲しい。
「上手い具合に騙せて、文句も言われない」とか思ってそうで、そのセンスが、まあ合わない。
もっといい代案なぞ浮かばんし、売れたから良かったけどね。




・『殿、利息でござる!』大ヒット上映中!
http://tono-gozaru.jp/
・殿、利息でござる! - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AE%BF%E3%80%81%E5%88%A9%E6%81%AF%E3%81%A7%E3%81%94%E3%81%96%E3%82%8B!

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