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『メッセージ』感想

メッセージ

質は良さ気だが。。。

原作未読だが、大分端折ってる重要箇所が幾つかあり、それにより良い所と悪い所があるがそれらについては割愛する。

ちょっと前の『インターステラー』が地味なハード系クラシカルSFだったのに対し、こちらはそれを遥かに上回る超絶地味SFであった。

いやあの地味なインターステラーですらまだエンタメ要素あったのに、このメッセときたら初心者をマッハで置いてけ堀にする気MAXのヘルモードである。
寝ちゃうよ。
これ系好物じゃない人、多分みんな寝ちゃうよ。


=以下、ネタバレです。=

序盤の流れは、死ぬほど好き。戦闘機がマッハかますシークエンスのとこ最高。
個人的にはそこがピーク。

原作の「Story of Your Life」と言うタイトルが指す通り、そう言ったテーマなもんだから、SFはあくまで舞台装置であり、そこにエンタメ要素は欠片も無い。
極めてハードな、それも哲学がどっしり腰を下ろすタイプの講演的スタイル。

この映画が伝えたいであろうテーマの一つは、言語によるコミュニケーションだろうから、そこは猿でも解るようにじっくりと主人公たちが取り組んでいく。
残念ながら地球人に助けを求めにきたこのタコ野郎たちは、よりにもよって人間とは色んなレベルが段違いで、鯨の鳴き声みたいなよく解らん音を出したり、人類側の科学じゃ知覚も出来ない何らかの方法で仲間とコンタクトしている。
もう少しお前らに近いタイプの宇宙人に助けを求めれば良いものを、余程宇宙は孤独なのか、技術的な問題なのか、近かっただけなのか。

で、そのクセ文字を使う。
このヘプタポッド文字だけが急に原始的で、こちらに合わせられるギリギリの意思疎通ツールだったのか解らないが、こっちの言語を完璧に理解しているっぽいヘプタ野郎たちが、何故もっと有効な方法を用意していないのかも解らない。
何やかんやのリソースに余裕が無かったのかも知れないが、恒星間か銀河間かの航行かます時間すら超越してるらしいこのタコ野郎たちは、何なんだろうマジで。
まあ、アボット死んじゃうらしーしギリギリなんだろうねきっと。本気出せばかなり凄いんだけど地球環境が劣悪過ぎるんだろなぁ。

この辺はいいや。

で、もう一つのテーマっぽい哲学部分が全く理解出来ない。事もないんだが、疑問点多過ぎ。
確定的な説明が無いので、推測するしかないのもその解り辛さに繋がるんだが、この映画では少なくとも決定論的世界に主人公はいるんだよね?
にしては中国の将軍とのやり取りは明らかに変だし、全てが決定された円環ではあるものの一方通行の未来としては、意味が通らない。
むしろリング状にループする流れは、決定論だと成り立たないから、ルイーズが回想する未来のシーンは、既知の(過去の)未来であって、その後に来る本当の意味での未来とは違う時間なんだよね。
この辺、説明一切無いから、全く解らない。

決定論なら仮に未来で教えられた電話番号を過去で観ても、知った瞬間にそれが過去のものになるから、見ている未来のシーンでも既に知ってないと可笑しい訳。
 ※いやこの説明は成り立たないんだけど無理矢理言えばこうなる。
極端な話、決定論だとタイムパラドクスになるのだが、この映画では、その辺を全く説明せず強引に終了するので、もやもやが酷い。

しかし、じゃあエヴェレット解釈的な世界ってことで~にしちゃうと、これまたルイーズの決定論的選択がボヤける。
要するに例え娘が病気で自分より早く死んじゃう未来が解っていても、その娘の人生を選択する。だって超大事だから、かけがえないから、一期一会。ってこと。
ここに関しては解らんでも無いし、まあ少なくとも普通の親であれば、当たり前の感情でもある。

ただ、それは幾ら悲しい未来と言っても、それでも選択出来る、言わば回避しなくても良い、もしくは回避したくない部類だからに他ならない。
いやそれがテーマなんだから水を差すのは野暮ではある。

しかしそれでも、考えざるを得ないのは、娘の気持ち。
あの娘さんは生まれてきて幸せだったろう。後悔もないだろう。それでも病気が治る未来があるのならどうだろう。
もしくは病気ではなく、キチなクソ野郎に拷問され嬲り殺しにされる未来があったら?

それも受け入れるのか?選択するのか?

私なら、無理。

そしてそも決定論なら、選択の余地などは全く無い。


タイムパラドクスな話はどちらかと言うと好きな部類。
しかし未来や隣の世界から下駄を借りてくるチートな内容で、しかもその下駄を永劫返さないタイプは大嫌い。
この映画がどっちなのか、やはり解らなかった。




・映画『メッセージ』 | オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ
http://www.message-movie.jp/
・メッセージ (映画) - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%82%B8_(%E6%98%A0%E7%94%BB)

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